透析療法合同専門委員会

透析療法合同専門委員会委員長からのご挨拶

透析療法合同専門委員会 委員長

 透析療法合同専門委員会を代表してご挨拶申し上げます。
 日本透析医学会の統計調査によれば、2019年12月末のわが国の慢性透析患者数は約34.5万人弱と報告されています。腎移植の機会が少ないわが国では、末期腎不全患者は透析療法の長期継続によって日常生活を維持せざるを得ないのが実情であり、このため、わが国では生命予後の改善とともに、合併症の予防と生活の質向上が追及されてきました。その結果、透析療法の成績は世界に冠たるものとなっており、平均透析歴は7.35年であり、透析歴5 年未満は47.5%ですが、5年以上10年未満が24.8%、10年以上20年未満が19.2%、透析歴20年以上が6.1%、30年以上が1.9%、40年以上が0.4%、最長透析歴は51年4ヵ月と諸外国に比べ長期透析患者数の占める割合がかなり多くなっています。
 このように良好な成績は、透析医学および周辺医学の進歩に依存していると考えられますが、透析に携わる熟練した看護師や臨床工学技士などの透析技術スタッフによる処も大きいと思われます。
 透析療法合同専門委員会はわが国で慢性透析療法が急速に普及し始めた1973年に医療国家資格のない透析技術者に対して認定士制度を準備する検討会として発足し、1976年4月に現在の形の委員会となりました。日本腎臓学会、日本人工臓器学会、日本泌尿器科学会、日本移植学会と日本人工透析研究会(現、日本透析医学会)の5学会から選出された委員により構成され、初代委員長には稲生 綱政教授(東京大学医科学研究所)が就任されました。認定士制度の準備を進めるなか、1979年には太田 和夫教授(東京女子医科大学)が2代目委員長になり、翌年3月16日に第1回透析技術認定士の試験が実施され232名が認定されています。
 その後、透析装置などの生命維持管理装置の操作および保守点検を扱う医療技術者の必要性が求められ、関係団体の努力もあり1987年6月2日、「臨床工学技士法」が公布されました。翌年4月1日に同法は施行されて第1回の国家試験が実施され、初代臨床工学技士が誕生しました。
 臨床工学技士法の制定により、透析技術認定士認定講習会と認定試験の目的は透析医療の現場で働く、臨床工学技士、看護師、准看護師の生涯教育へと移り代わっていったことになります。
 2008年には佐中 孜教授(東京女子医科大学)が3代目委員長となり、透析技術認定士の認定更新制度の発足により生涯教育の充実が図られ、2013年には4代目委員長として篠田 俊雄教授(つくば国際大学)が就任されて更新認定が行われ同制度が定着致しました。最近では、更新講習会や認定講習会にeラーニングを導入し、遠隔地での受講、反復学習などが可能となり、日常業務への妨げのない受講についてはその利便性が高く評価されております。
 今日の透析医療では患者の高齢化とともに、合併症対策や医療事故防止がいままで以上に重要視されています。また近年では従来の血液透析に代わりオンライン血液透析濾過を受ける患者数が年々増加しており、透析液の清浄化ならびに透析排水の適正な管理が求められて来ています。
 透析療法合同専門委員会では、これからも安全で質の高い透析療法の実践を目指して、認定講習会およびテキスト、認定試験、更新講習会をより充実したものにしていく所存です。
 透析技術認定士認定制度の一層の発展には、皆様のご支援、ご厚誼が不可欠です。今後とも何卒、宜しくお願いいたします。


透析療法合同専門委員会 委員長
順天堂大学医療科学部臨床工学科
特任教授 峰島三千男